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避難訓練の案内を見ただけで、階段の長さを数えてしまう
社内メールに「来週、全館避難訓練を行います」と届いた瞬間、会議室より先に非常階段の段数が浮かぶ。膝が痛みやすい、息が上がりやすい、めまいが心配。それでも周囲が当然のように参加すると話していると、自分だけ相談するのは大げさに思えてしまいます。
当日、列の流れを止めたくなくて、手すりにつかまりながら皆と同じ速度で降りる。集合場所では笑っていても、席へ戻るころには身体がこわばり、午後の仕事に集中できない。訓練のために体調を隠すことが、毎年の決まりになっていないでしょうか。
負担は訓練の数十分だけではありません。前夜から靴や薬を何度も確かめ、朝は遅れないよう早く出社し、終了後も「遅かったと思われたかな」と周囲の表情を読む。本来は備えを確かめる時間が、自分の弱さを隠し通せるか試される一日になってしまいます。
「特別扱いされたくない」が安全確認を遅らせる
相談できない背景には、痛みそのものだけでなく、「面倒な人と思われたくない」「年齢のせいだと見られたくない」という不安があります。普段は歩けるから説明が難しい、日によって状態が違うから自分でも判断しにくい。見えにくい困りごとほど、黙る理由が増えていきます。
しかし、避難訓練は全員が同じ動きをできるかを競う場ではありません。実際に困る地点や連絡方法を見つけ、組織として備える機会です。何も伝えないまま無理をすると、会社側も必要な準備を知れません。配慮の相談は、訓練の目的に沿った情報共有です。
ここで分けたいのは、「訓練へ参加したくない」という話と、「安全に参加できる条件を確かめたい」という話です。参加する意思があっても、経路や速度に不安があることは両立します。二択にせず条件を相談すれば、欠席か我慢かの間に現実的な選択肢を作れます。
当日ではなく、案内が来た時点で三つを確認する
まず安全衛生の担当者や上司へ、「階段を続けて降りると膝に痛みが出ることがあります。今回の避難手順を事前に確認したいです」と、状態と希望を一文ずつ伝えます。診断名を詳しく話すことに抵抗があるなら、どの動作で何が起きやすいかを伝えるだけでも、相談の入口になります。
次に、予定されている経路、途中で待機できる場所、集合後の点呼方法を確認します。エレベーターの使用可否や別経路は建物と災害の種類で異なるため、自分の判断で決めず、施設の防災計画と担当者の説明に従います。必要なら同行者や連絡役を決め、誰に合図するかまで共有します。
最後に、体調が悪化した時の中止基準を先に決めます。「痛みが強くなったら列を外れ、担当者へ知らせる」など、観察できる言葉にしておくと、その場で我慢するか迷う時間を減らせます。実際の緊急時には訓練時の自己判断へ固執せず、館内放送や消防・施設担当者の指示を優先してください。
小さな記録が、次の訓練を現実的にする
訓練が終わったら、「何階から息が上がったか」「手すり側の列を歩けたか」「点呼まで連絡が届いたか」を短く残します。感想を「つらかった」で終わらせず、場所と動作に分けると、次回の経路や役割を見直す材料になります。
自分だけの要望に見えても、けがの回復中の人、妊娠中の人、荷物を持つ人など、同じ場所で困る人がいるかもしれません。一人が具体的に伝えたことで、案内文に相談窓口が加わったり、事前確認の時間が設けられたりする可能性があります。安全は、黙って合わせる人の数ではなく、困りごとを拾える仕組みで支えられます。
担当者へ伝える時は、感謝や長い弁明を重ねなくても大丈夫です。「今日確認できたこと」「難しかった地点」「次回までに決めたいこと」の三つを箇条書きにすると、相手も改善点を受け取りやすくなります。自分を責める報告ではなく、次の安全性を上げる振り返りとして残します。
「迷惑をかける怖さ」まで整理してよい
手順が分かっても言い出せない時は、「相談したら誰にどう思われる気がするか」を紙に書いてみます。過去に体調を軽く扱われた経験や、家族から我慢を褒められてきた記憶が重なると、職場の一通の連絡にも強い緊張が起こります。今の担当者の反応と、昔からの予測を分けることが大切です。
セッションでは、階段への不安だけを消そうとするのではなく、助けを求める直前に浮かぶ言葉、身体の反応、相手へ見せたくない自分を一緒に確認できます。いきなり大きな要求をする必要はありません。まず「訓練の流れを事前に教えてください」と聞く一歩から、あなたも含めた避難計画へ変えていけます。送る前の短い相談文を作り、どの言葉なら自分の口から言えるかを試すこともできます。